レンタルスペースを開業する場所を選ぶとき、「人が多い駅」「駅から近い物件」を探すだけでは不十分です。人が多くても、開業予定のスペースを探している人がいなければ予約は入りません。予約が入っても、家賃が高すぎれば利益は残りません。
レンタルスペースに適した立地とは、開業予定のスペースを探している人がいて、利用者が無理なく来られ、競合と比較されても選ばれる余地があり、想定売上に対して家賃が高すぎない場所です。
駅の乗降客数や周辺人口は、地域の規模を知る参考にはなります。しかし、その地域でダンススタジオを探している人の数や、平日の日中に会議室を必要とする企業の数までは分かりません。
立地を判断するには、Googleで検索されている回数、予約ポータルサイト上の競合、駅からのアクセス、周辺環境、家賃を組み合わせて確認する必要があります。
筆者が横浜市内で運営する2店舗のうち、1店舗は開業前に、その地域でレンタルスタジオがどのくらい探されているかを十分に確認できておらず、オープンから8か月間赤字が続きました。
この経験から、人口や駅の利用者数だけでなく、開業予定のスペースが実際に探されているかを確認する重要性を実感しています。
この記事では、こうした実体験も踏まえ、レンタルスペースの立地選びで確認すべき条件と、開業候補のエリアを調査する手順を解説します。
レンタルスペースの「エリア」と「物件」は分けて選ぶ
レンタルスペースの立地選びは、エリア選定と物件選定の2段階に分けて考えます。
この2つを混ぜると、内見で気に入った物件に判断を引っ張られ、「この物件を借りる理由」を後から作ってしまうことがあります。
| 段階 | 主な確認項目 | 判断すること |
|---|---|---|
| エリア選定 | Googleで検索される回数、競合の数と利用状況、駅の規模、交通の利便性、家賃水準 | その地域で予定する業態が成立するか |
| 物件選定 | 駅からの経路、実際の家賃と初期費用、広さ、構造、音、設備、貸主の承諾、周辺テナント | その物件で安全に継続して運営できるか |
先に需要と採算が見込める地域を絞り、その後に条件を満たす物件を探します。
順番を逆にすると、「家賃が安い」「内装がきれい」「駅から近い」といった物件の魅力を優先し、その地域に本当に需要があるかを冷静に判断しにくくなりますのでご注意ください。
レンタルスペースの立地を判断する4つの条件
開業予定のスペースを探している人がいる
最初に確認するのは、地域全体の人の多さではなく、開業予定の種類のスペースが実際に探されているかどうかです。
同じ駅でも、貸し会議室、レンタルスタジオ、撮影スタジオ、レンタルサロンでは、探している人の数が異なります。駅前で人通りが多くても、自分が開業する種類の需要があるとは限りません。
Googleで検索されている回数や、予約ポータルサイトに掲載されている競合のレビュー、公開されている空き状況などから、その種類のスペースが実際に利用されているかを確認します。
駅から近く、利用者が通いやすい
駅からの近さは、レンタルスペースの立地を判断するうえで分かりやすい強みです。予約ポータルサイトでも「駅徒歩1分」「駅徒歩3分」といった情報が比較材料になるため、同じ料金や設備なら、基本的には駅に近いスペースの方が選ばれやすくなります。
ただし、徒歩分数だけで実際の通いやすさは決まりません。利用する路線、駅の出口、信号、坂道、建物の見つけやすさによって、利用者の負担は変わります。
撮影機材を持ち込む利用者が多い場合は、駐車場や搬入経路も確認します。定期的に利用されるスタジオやサロンでは、利用者が毎週無理なく通える路線や交通費も判断材料になります。
競合と比べて選ばれる余地がある
競合がある地域は、それだけで避ける必要はありません。複数の競合に継続してレビューが投稿されていれば、その種類のスペースが利用されていると判断する材料になります。
競合が多くても、予約が一部の人気店だけに集中している場合や、低価格のスペースが大量にある場合は、新規参入が難しい可能性があります。競合の件数だけでなく、料金、広さ、設備、レビューの新しさなども確認します。
競合がまったくない地域にも注意が必要です。競合のいない穴場ではなく、そもそも利用者がその地域でスペースを探していない可能性があります。
想定売上に対して家賃を負担できる
需要の高い駅ほど、家賃も高くなる傾向があります。予約数が多くても、家賃と手数料を差し引いた後に利益が残らなければ、事業としては成り立ちません。
家賃が安い郊外の物件でも、検索されている回数が少なく、競合より高い料金を設定できなければ黒字化は難しくなります。
重要なのは家賃の安さではなく、現実的に見込める売上から、家賃、手数料、水道光熱費、清掃費などを差し引いても利益が残るかどうかです。
売上や利益の計算方法は、「レンタルスペースは儲かる?収益モデルと黒字化に必要な稼働率を実例で解説」で詳しく解説しています。

レンタルスペースの開業エリアを調査する6つの手順
レンタルスペースの需要は、駅の乗降客数やGoogleで検索されている回数など、1つの数字だけでは判断できません。
次の6つの手順で情報を集め、最後に需要と採算の両面から出店するかを判断します。
- 開業するスペースの種類と候補地を決める
- Googleで検索されている回数を調べる
- 予約ポータルサイトで競合を調べる
- 駅の乗降客数と周辺施設を調べる
- 現地でアクセスと周辺環境を確認する
- 想定売上と家賃を比較して出店を判断する
手順1:開業するスペースの種類と候補地を決める
まず、開業したいレンタルスペースの種類と、候補となる地域を決めます。
どのような種類があるのか分からない場合は、「レンタルスペースの種類は?用途別のメリット・デメリットを運営者目線で比較」も参考にしてください。

たとえば、横浜駅周辺でダンス向けのレンタルスタジオを開業したい場合は、「横浜 ダンススタジオ」「横浜 レンタルスタジオ」「横浜 ダンス練習」などの言葉で需要を調べます。
このように、Googleで検索するときに入力する言葉を「検索キーワード」と呼びます。「レンタルスペース」だけでは異なる種類の需要が混ざるため、候補地の名前と、開業するスペースの種類を組み合わせるのが基本です。
近隣エリアと比較する場合は、駅名を近隣駅に置き換え、同じ種類のスペースが検索されているかを確認します。
手順2:Googleで検索されている回数を調べる
調査する言葉を決めたら、それぞれがGoogleで月に何回程度検索されているかを調べます。
検索回数が多ければ、その地域でスペースを探している人がいる可能性も高くなります。ほとんど検索されていなければ、Google検索から予約を獲得するのは難しいと考えられます。
検索回数は、Google広告の「キーワードプランナー」で確認できます。キーワードプランナーは、Googleで検索された月間回数の目安を調べるためのツールです。利用にはGoogle広告アカウントの設定が必要です。

「月間平均検索ボリューム」というのが、そのキーワードがGoogleで1か月に検索される平均回数です。
1つの言葉だけで判断せず、利用者が入力しそうな複数の言葉を確認します。
- 横浜 ダンススタジオ
- 横浜 レンタルスタジオ
- 横浜 ダンス練習
- みなとみらい ダンススタジオ
- 桜木町 ダンススタジオ
地域や言葉による検索傾向の違いを比べる場合は、「Googleトレンド」も利用できます。ただし、検索回数が少ない言葉は十分なデータが表示されないことがあります。
検索回数は予約件数ではありません。同じ人が何度も検索することもあり、検索しても予約しない人もいます。売上を直接予測する数字ではなく、地域の需要を比較する材料として使います。
手順3:予約ポータルサイトで競合を調べる
次に、予約ポータルサイトで候補エリアとスペースの種類を検索し、実際にどのような競合が営業しているか確認します。
Googleの検索回数から分かるのは、その地域でスペースを探している人がいる可能性です。予約ポータルサイトでは、すでに営業している競合の数、料金、設備、レビューなどを確認できます。

競合を調べるときは、次の項目を比較します。
- 同じ種類・同程度の広さのスペース数
- 駅からの距離、広さ、定員
- 平日・土日・時間帯ごとの料金
- 設備、内装、利用できる目的
- レビューの件数と投稿された時期
- 公開されている範囲の空き状況
競合がまったくない地域は、出店のチャンスではなく、そもそも需要が少ない可能性があります。競合が多い地域では需要が見込める一方で、新しく開業しても比較の中で選ばれるだけの料金、広さ、設備などが必要です。
複数の競合へ継続してレビューが投稿されているか、特定の人気店だけに利用が集中していないかも確認します。
予約カレンダーで埋まっている時間が、すべて利用者からの予約とは限りません。運営者が販売を停止している場合もあるため、空き状況だけで判断せず、レビューの新しさや件数も確認してください。
手順4:駅の乗降客数と周辺施設を調べる
駅の乗降客数や周辺人口から、その地域にどのくらい人が集まっているかを確認します。
乗降客数は、「駅名+乗降客数」で検索すると、鉄道会社や自治体などが公表している情報を確認できます。候補となる駅が複数ある場合は、同じ年の数字で比較します。
ただし、人が多いからといって、開業予定のスペースに需要があるとは限りません。乗降客数は地域の規模を比べる参考として使い、Googleの検索回数や競合の利用状況と組み合わせて判断します。
あわせて、Googleマップや自治体の情報などを使い、開業するスペースと関係しそうな施設や活動が周辺にあるかを確認します。
- オフィス、学校、大学、公共施設
- ダンススクール、劇場、イベント会場
- 教室、サロン、商業施設
- 観光地、繁華街、住宅地
- 地域で行われているイベントや活動
たとえば、オフィスが多い地域は貸し会議室を検討する材料になります。ダンススクールや劇場が集まる地域は、練習場所を必要とする人がいる可能性を考える材料になります。
周辺に関連施設があるだけで、需要があるとは断定できません。Googleの検索回数や競合の利用状況を補足する情報として使います。
手順5:現地でアクセスと周辺環境を確認する
インターネット上の調査だけでは分からない部分は、実際に現地を歩いて確認します。
駅からの近さは、レンタルスペースの分かりやすい強みです。同じ料金や設備なら、基本的には駅に近いスペースの方が選ばれやすくなります。
現地では、候補物件まで実際に歩き、次の項目を確認します。
- 利用する駅の出口から物件までの実際の時間
- 信号、坂道、階段など移動の負担
- 建物の入口や部屋の場所が分かりやすいか
- エレベーターや搬入経路の有無
- 駐車場、駐輪場、周辺のコインパーキング
- 昼と夜の人通り、明るさ、騒音、周辺の雰囲気
物件情報の徒歩分数には、改札から出口までの移動、信号待ち、建物内の移動などが含まれていない場合があります。利用者が使う路線と出口から歩き、迷わず到着できるかを確かめましょう。
手順6:想定売上と家賃を比較して出店を判断する
最後に、ここまで集めた情報を使い、そのエリアと候補物件で利益を出せるかを判断します。
Googleで検索されている回数が多く、競合にも利用実績があったとしても、家賃が高すぎれば事業としては成り立ちません。
競合の料金、広さ、設備などを参考に、自分のスペースで設定できる料金と、現実的に見込める予約時間を慎重に試算します。
想定売上から、次の費用を差し引きます。
- 家賃・共益費
- 予約ポータルサイトの成約手数料
- 水道光熱費・通信費
- 清掃費・消耗品費
- 予約システムなどの月額費用
あわせて、敷金・礼金、仲介手数料、内装工事、設備・備品などの初期費用と、その回収期間も確認します。
需要が見込めること+競合と比べて選ばれること+家賃を払っても利益が残ること
この3つを満たすエリアと物件を、開業候補として残します。根拠が弱い場合は、予約数や料金を都合よく引き上げず、別のエリアや物件と比較してください。
売上、利益、損益分岐点の計算方法は、「レンタルスペースは儲かる?収益モデルと黒字化に必要な稼働率を実例で解説」で詳しく解説しています。

レンタルスペースの立地選びで起こりやすい失敗
乗降客数だけで需要を判断する
乗降客数は駅の規模を示しますが、開業予定のスペースを探している人の数ではありません。また、乗り換えだけで駅を利用している人も含まれます。
Googleで検索されている回数と、予約ポータルサイトに掲載された競合の利用状況を確認し、開業する種類に絞って判断します。
競合がいない地域を穴場だと思う
競合がいない理由は、需要が少ない、レンタルスペースとして利用できる物件が見つかりにくい、近隣条件が厳しいなど複数あります。
競合がいないという理由だけで出店せず、Googleの検索回数や周辺施設などから、その地域でスペースを必要としている人がいるかを確認してください。
駅徒歩の表記だけを信じる
物件情報の徒歩分数には、改札から出口までの移動、信号待ち、坂道、建物内の移動などが含まれていない場合があります。
利用者が使う路線と出口から、実際に候補物件まで歩いて確認します。
安い家賃を優先する
家賃が安ければ損益分岐点は下がりますが、予約が入らなければ固定費だけが残ります。
家賃が安い理由が、駅から遠い、建物が分かりにくい、利用時間に制限がある、音や振動の問題があるといった条件ではないか確認してください。
一度だけ現地を見て契約する
昼は静かでも、夜になると隣の飲食店の音が響くことがあります。また、夜は人通りが少なく、利用者が不安を感じる地域もあります。
主な利用時間帯と、その前後の時間にも現地を訪れ、騒音、人通り、明るさ、周辺テナントの営業状況を確認します。
繁忙期の予約状況だけで売上を予測する
競合の空き状況を短期間だけ確認すると、季節や周辺イベントの影響を受けた状態を通常の需要と誤認する可能性があります。
時期による検索傾向、レビューの投稿日、複数週のカレンダーを確認し、閑散期も含めた売上で採算を計算します。
良い物件だからといって需要を調査せず開業する
条件のよい物件を見つけても、需要を確認せずに契約するのは危険です。
筆者は、「家賃が安い、内装がきれい、駅から徒歩1分、部屋の形もちょうどよい」という、物件自体の条件が非常によい場所を見つけ、十分な需要調査を行わずに契約してしまいました。
しかし、その地域ではレンタルスタジオがほとんど検索されておらず、開業から8か月間赤字が続きました。需要が高まる夏休みの9か月目に黒字化できましたが、立地の弱さを料金や集客で補うのは簡単ではありません。
Googleで検索されている回数が少ない地域で始めるなら、検索以外の集客経路、赤字期間を支えられる運転資金、撤退基準が必要です。

レンタルスペースの立地に関するよくある質問
駅から徒歩何分以内がよいですか?
基本的には駅に近いほど有利ですが、一律に何分以内なら成功できるとは決められません。車で機材を運ぶ撮影スタジオや、近隣住民が通う教室では、駐車場や周辺人口など別の条件が優先されることもあります。
あくまで筆者の経験上ですが、駅から徒歩8分以上になると、利用者に遠いと感じられやすく、集客面で不利になる印象があります。
同じ地域の競合が駅から何分の場所にあり、料金やレビューにどのような違いがあるかも確認してください。
競合は何件までなら参入できますか?
競合の件数だけでは判断できません。需要が大きければ競合が多くても成り立ち、需要が小さければ2〜3件でも供給過多になる可能性があります。
同じ種類・同程度の広さの競合について、料金、レビューの新しさ、公開されている空き状況を確認します。
競合が少なく、かつ競合の予約状況が埋まっている地域は、出店候補になりやすいと考えられます。ただし、検索回数と家賃も含めて判断してください。
郊外や住宅地でも運営できますか?
近隣住民、地域の講師、施術者などによる継続的な利用が見込め、家賃と売上のバランスが合えば運営できます。
ただし、Googleで検索されている回数が少ない地域では、既存顧客を持つ講師とのつながり、地域コミュニティ、紹介など、検索以外の集客経路が必要になる場合があります。音や人の出入りが近隣住民へ与える影響にも注意してください。
Googleで検索されている回数が少なくても開業できますか?
検索回数が少ないだけで、開業できないとは言い切れません。しかし、Google検索から自然に予約が入ることは期待しにくくなります。
すでに利用者候補を持っている、定期利用を見込める、紹介や地域コミュニティから集客できるなど、Google検索以外から予約を獲得できる根拠が必要です。
物件を見つけてから需要を調べてもよいですか?
内見候補を見つけてから追加で調査することはありますが、契約前に必ず需要と採算を確認してください。
できれば先に複数のエリアを比較し、負担できる家賃の上限と必要な物件条件を決めておくと、物件の見た目や不動産会社の説明に判断を左右されにくくなります。
まとめ:需要・競合・アクセス・家賃を確認して立地を選ぶ
レンタルスペースの立地は、駅の乗降客数や家賃の安さだけでは判断できません。
- 開業予定のスペースがGoogleで検索されているか
- 競合に継続した利用実績があり、新規参入の余地があるか
- 利用者が駅から迷わず、無理なく通えるか
- 現実的な売上から家賃と経費を差し引いても利益が残るか
先に需要と採算が見込めるエリアを絞り、その後に条件を満たす物件を探します。物件を気に入ってから需要を都合よく予測するのではなく、数字と現地確認の両方から判断することが大切です。
筆者のように需要の確認が不十分なまま出店すると、駅近で家賃の安い物件でも赤字が続く可能性があります。契約前に、Googleの検索回数、競合、アクセス、家賃を必ず確認しましょう。



